■ Indian summer day 

進藤が色々な理由を付けて、ボクを連れて歩く様になってから、どれくらいになるだろう。

彼の馴染みの渋谷の碁会所であるとか、(これはボクのリクエストだ。最初進藤は渋っていたが、 この間やっと連れていってもらった。)彼が好きな映画であるとか、先だってはコンサートにも行かないかと誘われた。

こちらはボクの趣味とかなりかけ離れていたので断ったが、進藤はボクをいろんな所へ連れて行きたがる。

どうしてだ?と聞くと、「一緒に行った方が楽しいじゃん」と屈託のない笑顔で答えられる。
結局つき合ってしまう事が多いのだが、進藤が楽しそうにしてるものだから、これはこれで良いのかなと思ったりする。

実際ボクも楽しんでいるのだし。なのでそれ以上の追求は止めておこう。……なんとなくそう思ったり…

野球とか、バスケットボールとかサッカーとか、そういったスポーツは観るのもやるのも好きらしく、 話題にのぼる事が多い。常識程度の知識はあるので、相づちを打ちながら彼の話を聞く。 進藤講師直伝で選手の名前も随分憶えた。

彼は話好きだ。好きなだけでなく、人を楽しませる術も持っているらしい。良い特技だ、これは仕事に活かせるね。
と、いつか進藤に言ったら「オマエ聞き上手だからだよ」とカラカラ笑いながら言われた。



その日は映画を見に行った後、母の知り合いの方が出展している華展へ立ち寄った。
場所が近いからと、母に招待券を押しつけられてしまったのだ。

進藤は、オトコ二人で華展かよ〜。しゃ〜ねぇ〜な〜と言いながらもつき合ってくれた。
こういうものに興味が無いのかと思ったが、思いの外熱心に見ている。

繊細で愛しくなるようなもの。豪奢で豪壮な作品。
大胆に空間を切り取り、活けた方の世界観すら感じられる力強い作品。

美しく調和のとれた小宇宙。ボクらがいつも向かい合っているものとどこか近い。
小さな宇宙。完成された世界がここにもある。






電車に揺られながら、今ひとつだった映画の内容とか色々と、取り留めも無く考えていたら 「ちょっと、つきあわねえ?」と進藤が話しかけてきた。

アテがあるらしい進藤について電車を降り、並木の続く路を行く。

「このまま帰るの惜しい気がしてさ。」

こんなに天気が良いの久しぶりじゃん。ああ、ここだ・ここだと言いながら、近道なのか木立の中をどんどん歩いていく。
ボクもその後をついて歩く。何が出で来るんだろう?

木立が切れ切れになり視界が開けると、目の前に突然野球場が広がって見えた。
なんだか既視感だ。フィールド・オブ・ドリームス。あれはとうもろこし畑だったか。

白球の打ち上げられる音。互いに掛け合う声。草野球チームが試合をしているらしかった。
進藤は外野に備え付けられたベンチに腰を下ろし、思いきり伸びをする。

「今日はちっと肩凝った。狭いトコ座ったり、普段入らないようなトコに行ったりで。」

「気疲れしたのか?つき合わせてすまなかったな。」

「いや〜、映画はアレだったけど、花は綺麗だった。いいもん見たよ。」


観戦者が二人しかいない外野のベンチ。落ちきらない木の葉が、風に揺れて乾いた音を立てる。
ここは靜かだがグラウンドの中は熱戦の最中だ。


「ココ暖ったかいなあ…。眠くなる。何ていうんだっけ、こんな日。」

「…小春日和だよ。」

「コハル?暖ったかいおねーさんみてえ。」


二人で顔を見合わせて笑った。何がおかしかったのか、自分でも良く分からなかったけれど、朗らかな心持ちがして、笑えてきた。

季節はこれから冬へと向かう。
真冬へ向かう季節の隙間に出逢った暖かな……

小春日和────。


■ Indian summer day 
sentence/illustrating
sayumi watayuki
■主線/丸ペン
■着色/PSP
2002.11.15.up

以前他所様のPBBSで描いた絵が、この絵の元になっています。
その絵のタイトルは「暖かなヒカアキ」。

あったかそうな良い感じの絵を描きたくて、設定をいろいろ考えていたらこのような長い「説明文」つきになってしまいました。
時期としては今より2.3年くらい経っている感じです。ヒカルがかなり大きいですよね。(笑)

この絵の塗り別バージョンは、茉代にしき様のご本の背表紙イラストとしても使っていただいています。

肩を抱くというよりも、ガシッと抱え込み。(笑)直接手で触れていないあたりにヒカルの逡巡が……という深読みの余地もありです。(笑)