進藤が色々な理由を付けて、ボクを連れて歩く様になってから、どれくらいになるだろう。
彼の馴染みの渋谷の碁会所であるとか、(これはボクのリクエストだ。最初進藤は渋っていたが、
この間やっと連れていってもらった。)彼が好きな映画であるとか、先だってはコンサートにも行かないかと誘われた。
こちらはボクの趣味とかなりかけ離れていたので断ったが、進藤はボクをいろんな所へ連れて行きたがる。
どうしてだ?と聞くと、「一緒に行った方が楽しいじゃん」と屈託のない笑顔で答えられる。
結局つき合ってしまう事が多いのだが、進藤が楽しそうにしてるものだから、これはこれで良いのかなと思ったりする。
実際ボクも楽しんでいるのだし。なのでそれ以上の追求は止めておこう。……なんとなくそう思ったり…
野球とか、バスケットボールとかサッカーとか、そういったスポーツは観るのもやるのも好きらしく、
話題にのぼる事が多い。常識程度の知識はあるので、相づちを打ちながら彼の話を聞く。
進藤講師直伝で選手の名前も随分憶えた。
彼は話好きだ。好きなだけでなく、人を楽しませる術も持っているらしい。良い特技だ、これは仕事に活かせるね。
と、いつか進藤に言ったら「オマエ聞き上手だからだよ」とカラカラ笑いながら言われた。
その日は映画を見に行った後、母の知り合いの方が出展している華展へ立ち寄った。
場所が近いからと、母に招待券を押しつけられてしまったのだ。
進藤は、オトコ二人で華展かよ〜。しゃ〜ねぇ〜な〜と言いながらもつき合ってくれた。
こういうものに興味が無いのかと思ったが、思いの外熱心に見ている。
繊細で愛しくなるようなもの。豪奢で豪壮な作品。
大胆に空間を切り取り、活けた方の世界観すら感じられる力強い作品。
美しく調和のとれた小宇宙。ボクらがいつも向かい合っているものとどこか近い。
小さな宇宙。完成された世界がここにもある。
電車に揺られながら、今ひとつだった映画の内容とか色々と、取り留めも無く考えていたら
「ちょっと、つきあわねえ?」と進藤が話しかけてきた。
アテがあるらしい進藤について電車を降り、並木の続く路を行く。
「このまま帰るの惜しい気がしてさ。」
こんなに天気が良いの久しぶりじゃん。ああ、ここだ・ここだと言いながら、近道なのか木立の中をどんどん歩いていく。
ボクもその後をついて歩く。何が出で来るんだろう?
木立が切れ切れになり視界が開けると、目の前に突然野球場が広がって見えた。
なんだか既視感だ。フィールド・オブ・ドリームス。あれはとうもろこし畑だったか。
白球の打ち上げられる音。互いに掛け合う声。草野球チームが試合をしているらしかった。
進藤は外野に備え付けられたベンチに腰を下ろし、思いきり伸びをする。
「今日はちっと肩凝った。狭いトコ座ったり、普段入らないようなトコに行ったりで。」
「気疲れしたのか?つき合わせてすまなかったな。」
「いや〜、映画はアレだったけど、花は綺麗だった。いいもん見たよ。」
観戦者が二人しかいない外野のベンチ。落ちきらない木の葉が、風に揺れて乾いた音を立てる。
ここは靜かだがグラウンドの中は熱戦の最中だ。
「ココ暖ったかいなあ…。眠くなる。何ていうんだっけ、こんな日。」
「…小春日和だよ。」
「コハル?暖ったかいおねーさんみてえ。」
二人で顔を見合わせて笑った。何がおかしかったのか、自分でも良く分からなかったけれど、朗らかな心持ちがして、笑えてきた。
季節はこれから冬へと向かう。
真冬へ向かう季節の隙間に出逢った暖かな……
小春日和────。
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■ Indian summer day ■
sentence/illustrating
sayumi watayuki
■主線/丸ペン
■着色/PSP
2002.11.15.up
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